NOTES

ケニア、5日目。「On the Road」

サファリを走るクルマの中の話をする。

アフリカの大自然と野生の動物たちを体感できるサファリツアー。往復の約10時間も含めて、ロッジで寝るとき以外は、ほとんどランドクルーザーの中にいる。

サファリツアーの運転手は、プロフェッショナルだ。いかに後ろに乗せている観光客たちを満足させるか、その一心で、めずらしい動物たちやめずらしいシーンを目撃させるために、大きな車体を揺らしながら激しくハンドルを切る。

では、いったい、どのようにあの広大な土地でめずらしい動物やシーンを見つけるのか。もちろん「経験」によって、おおよその目安はつくようになるだろうと思う。とはいえ、相手は機械ではない。気候や状況によっても変わってくるだろう。では、どうする?

ずばり、「コミュニケーション」なのだ。

ドライバーたちは、つねに無線で情報交換し合っている。「あっちの道にはライオンがいたぞ」「こっちではゾウたちが川を渡るところだ」と。ぼくらを担当してくれたJimmyは、たぶん、だけれど、優良なドライバーだった。すれちがうほとんどのドライバーと窓を開けて握手して談笑していた。そのおかげなのか、めずらしいと言われるチーターもライオンもサイも見ることができた。

このサファリを走り回るドライバーたちが同じ会社の仲間なのか、ライバル企業なのかはわからない。いずれにせよ、自分の評価コメントの点数を上げたいきもちがあるだろう(ツアー後に満足度アンケートが送られてくる)。それにもかかわらず、「個人」がいい情報を抱えて一人勝ちしようとせずに、他者と協力し合って「みんな」で勝とうとしている、そのあり方が、いいなぁと思った。

それはそうと、ドライバー同士の無線でのやりとりは、スワヒリ語なので理解できない。けれども、クルマの中でずっと耳に流れてくるせいで、なんとなくだけれど、わかってくる。その中で、あまりに頻出する印象的なフレーズがあった。

「バラバラ!」

「バラバラ」の意味をJimmyに尋ねた。「バラバラ」とは、「道」のことだという。どの道になんの動物がいるのかをやりとりするから、よく耳にしていたのかもしれない。スワヒリ語は、こういった繰り返しの単語が多い。現地でよく聞いた「ポレポレ」という気に入ったフレーズもある(「まぁまぁ、ゆっくりいきましょうや」の意)。

ふと思う。赤ちゃんが言語を習得していくのも、こういうプロセスなのだろうな。相手(赤ちゃん)が理解しているとは思わないけれど、ひたすら言葉を浴びせていく。親は「正しい文法を教えよう」というつもりで我が子に話しかけてはいない。赤ちゃんは、なんとなくシーンや文脈を理解して、単語のかけらを覚えていく。そしてだんだんとフレーズ、文章を覚えていくのだろう。

さて、サファリから帰ってきたその日は、在ケニア日本大使館へ。大使閣下へご挨拶することができて光栄でした。そのあとは、「ケニア三田会」という慶應義塾出身の人たちでケニアに住む人たちの集まりに、よそモノのぼくがおじゃまさせてもらい、貴重な経験ができました。

海外で誰かに会うと、「英語が話せるより大事なこと」は、「その人がなにを語れるのか」だと身にしみて思います。自分の国のことをよく知っていたり、自分の考えをちゃんと語れたり。伝えたいものがあれば、伝え方は、わりとなんとかなるもの。英語を話すのは高校生くらいからでも大丈夫ですからねー。

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(たしかに、よしたに。)