NOTES

時間をかける、ということ。

遅いよりも、早いほうがいい。

Wi-Fiだって、飛行機の移動だって、お風呂がわくのだって、なんだって、早いほうがいいに決まっているし、どんどんそういう時代になっている。ぼく自身も、せっかちだから、そう思う。

就職活動の早期化が問題になっているというニュースを読んだ。中学受験も、「終活」も、おなじ流れだと思う。これは、「早期化ビジネス」のようなもので、どこの企業もコンテンツでの差別化ができなくなってしまい、「早いうちからやりましょう」というのが、他よりも抜きん出る手段になってしまっているような気がする。「人生100年時代」と言われて寿命は伸びている日本なのに、どんどん前倒しが進んでいるのは皮肉なもので。

さて、「早い」の代表格といえば、AIだと思う。

ぼくはコピーライターという仕事をしているけれど、試しに「キャッチコピーを100本書いて」と依頼したら、10秒くらいで書き上げてくる(内容はさておき)。ひと昔前までは、駆け出しのコピーライターたちは、ヒーヒー言いながら先輩からの「100本ノック」の命令に応えてきたけれど、今ではそういう修行は必要ないのかもしれない。

ゴローズ」という日本のブランドがある。髙橋吾郎氏が1956年に設立したネイティブ・アメリカンにルーツをもつ革製品やジュエリーを販売する会社。国内外で人気があるけれど、なんと世界でたった1店舗しかない。オンライン販売もしない。

そのゴローズの商品は、実に、ビックリするほど手に入らない。

まず抽選に当たらなければならない。1日に入店できるのは40名程度。大行列ができるので、毎朝のように抽選をして、入店できる人を決めている。やっとの思いで入店が叶っても、今度は「順番」が大事。早めに入らないと在庫がなくなっていき、ほしいモノに出合える確率は大幅に下がる。さらに、お目当てのモノが必ずしもあるとは限らない。革製品もアクセサリーも、実に多種多様なアイテムがあるので、自分がほしいモノだけをゴローズが製作しているわけではないし(修理やカスタムなども日々受け付けている)、自分以外の多くの人もほしいモノを毎日のように購入しているので、在庫が常にあるわけではない。

なにも、ゴローズもわざと品薄にしているわけではなく、ものすごい需要があるにも関わらず、ひとつずつハンドメイドで供給しているので、そうなってしまうのは仕方がない。オンライン販売をしないのも、ゴローズのスタッフがひとつひとつのアイテムに込められた想いや取り扱い方を会話をしながら、直接手から手へとゴローズの商品を届けたいから、効率はわるいけれど、このスタイルを貫いているのだと思う。それが、インディアンの考え方なのかもしれない。

ぼく自身も、もう15年くらいゴローズに通っているけれど、あるほしいモノを手にいれるまでに5年かかったこともある。お店に入るたびに「ありますか?」と訊いて、「まだご用意できないんだよね」となり、それを繰り返したある日、突然「あるよ」と言われる。もちろん手にしたときのよろこびは尋常ではない。こどもを授かったときのように、よろこびと責任が胸にあふれ、「ずっと大切にしよう」と思う。大げさかもしれないけれど、ほんとうに、そんな気持ちになるのだ。

ゴローズは、教えてくれる。

なんでも多く所有すればいいわけではないということを。本当に大事なのはお金ではないということを。ひとつのモノを直しながら永く使うのが本当のエコだということを。真実はインターネットの海には浮かんでいないということを。マーケティングの常識よりもオリジナリティーや哲学が大事だということを。なにより、「時間をかける」ということの尊さを。

「時間をかける」ということが、希少な世の中だと思う。

コピーライターとしても、10秒で100本のコピーを書けてしまうAIはこわい。けれど、こっち(人間)は、半年でも1年でも話を聴いたり、答えや問いそのものをじっくり一緒に考えたり、さまざまな価値観をもつ人たちが「まぁ、いいよ」と納得したくなる道路を時間をかけてつくったりすることができる。

言葉は道具。丁寧に手入れされたほうが、よろこんでいい仕事をしてくれる。人にたくさん使ってもらって輝く。AIは、時間をかけるのが苦手だから、そういう「愛着」のようなものをつくれないような気がしている。

おかげさまで、ぼくの会社は4期目を迎えました。AIに負けずここまでやってこられたのは、ぼくを信じて声をかけてくださったみなさま、いつも支えてくださっているみなさまのおかげです。月並みですが、心からそう思います。4年目も、驕らず、焦らず、丁寧に。

お仕事の相談も、お待ちしています。理念、ロゴマーク、コンセプト、キャッチコピー。どんなご相談でも、お気軽にメッセージをお送りください。

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